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東京高等裁判所 平成3年(ネ)331号 判決 1991年4月24日

控訴人(附帯被控訴人、以下単に「控訴人」という。) 大嶋義男

右輔佐人 武井文雄

<ほか一名>

被控訴人(附帯控訴人、以下単に「被控訴人」という。) 當麻和以

<ほか一名>

右両名訴訟代理人弁護士 高木壯八郎

主文

一  控訴人らの控訴(当審における拡張請求を含む。)を棄却する。

二  附帯控訴に基づき、原判決中、控訴人らに関する部分を次のとおり変更する。

1  被控訴人當麻和以は、控訴人大嶋義男に対し、

(一)  金二四九〇万一二三七円及びこれに対する昭和五五年五月一三日から支払ずみまで年五分の割合による金員

(二)  金二七四万七〇九九円

を支払え。

2  被控訴人當麻和以は、控訴人大嶋とし子に対し、金二二万〇九〇四円を支払え。

3  被控訴人大東京火災海上保険株式会社は、控訴人大嶋義男に対し、金二〇七一万三六二四円及びこれに対する昭和五七年五月一六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

4  控訴人大嶋義男の被控訴人らに対するその余の請求を棄却する。

5  控訴人大嶋とし子の被控訴人當麻和以に対するその余の請求及び被控訴人大東京火災海上保険株式会社に対する請求を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、二審を通じこれを三分し、その一を被控訴人らの負担とし、その余の控訴人らの負担とする。

四  この判決の第二項1ないし3は、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

1  原判決を次のとおり変更する。

被控訴人らは、控訴人大嶋義男(以下「控訴人義男」という。)に対し、連帯して、金一億三八三四万〇九六三円(原判決認容額二七三五万八五六六円のほかに金一億一〇九八万二三九七円)及びこれに対する昭和五五年五月一三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え(請求拡張)。

被控訴人らは、控訴人大嶋とし子(以下「控訴人とし子」という。)に対し、連帯して、金二一四四万九七五五円(原審認容額二二〇万円のほかに金一九二四万九七五五円)及びこれに対する昭和五五年五月一三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え(請求拡張)。

2  被控訴人らの附帯控訴を棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの連帯負担とする。

4  仮執行の宣言

二  被控訴人ら

1  本件控訴を棄却する。

2  原判決中、被控訴人らの敗訴部分を取り消す。

3  控訴人らの請求(当審における拡張請求を含む。)をいずれも棄却する。

4  訴訟費用は、控訴人らの負担とする。

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

一  控訴人らは、原判決「請求原因」4(損害)(一)、(二)(原判決九枚目表二行目から一四枚目表四行目まで)を次のとおり改める。

「(一) 控訴人義男の損害

(1)  治療費 金六万四五〇〇円

控訴人義男は、治療費として地方公務員災害補償基金(以下「基金」という。)よりてん補されたもの以外に、わらび診療所及び大宮治療院等に通院して針治療等を受け、金五万五五〇〇円を支出し、また中島眼科に通院して眼の治療を受け、金九〇〇〇円を支出した。

(2)  入院付添費 金四九万七四七六円

控訴人義男は、大久保病院、浦和市立病院、川久保病院に入院治療中の一一九日間、妻とし子及び娘伸子の介護を受けたが、妻とし子は病院に宿泊し寝ずの看病をしたことがあり、外傷性てんかんによる大発作のためチアノーゼ症状が続くという危険な状態にあったときのことであって、右付添費については、一日当たり金三九〇〇円とするのが相当であり、一一九日分として金四六万四一〇〇円となる。

また控訴人義男は、清瀬病院入院中の四日間、職業付添人を雇い、金三万三三七六円を支払った。

(3)  食費 金一万四〇〇〇円

控訴人義男は、浦和市立病院に入院中の昭和五六年一一月一〇日、同月二四日、一二月四日、同月二二日にそれぞれ給食費として各金三五〇〇円合計金一万四〇〇〇円を支出した。

(4)  リハビリテーション機具等 金一三万二八七五円

控訴人義男は、後遺障害による生活上の不便を補うため、家屋内に手すりを設置し、シルバーカー、座椅子、眼鏡、聴診器付血圧計、歩行補助用ステッキ、車椅子をそれぞれ購入し、合計金一三万二八七五円を支出した。

(5)  交通費 金二四万八二四三円

控訴人義男の入院中、付添看護にあたった控訴人とし子の通院交通費として次のとおり支出した。すなわち、控訴人とし子は、大久保病院に一七日間通院しそのバス及び電車代が往復七〇〇円であったから合計金一万一九〇〇円、清瀬病院に五日間通院しバス、電車及びタクシー代が往復二五〇〇円であったから合計金一万二五〇〇円、浦和市立病院に七一日間通院し、そのうち三五日間はバス(その余は自家用車)を利用し、バス代が往復三六〇円であったから合計金一万二六〇〇円をそれぞれ支出した。

控訴人義男は退院後に、三四八日間浦和市立病院に通院したが、その通院には主に自家用車を利用し、自家用車を利用できない六日間のみタクシーを利用したが、タクシー代が往復二九二〇円であったから、タクシー代合計金一万七五二〇円を支出した。

控訴人義男の上記入院及び通院期間中のすべてを通じて、娘伸子は、付添看護の通院のため、また控訴人義男及び同とし子の通院のため伸子運転の自家用車を使用し、そのガソリン代として合計金一九万三七二三円を支出した。

以上、通院交通費の合計は金二四万八二四三円となる。

(6)  入院雑費 金九〇万三〇〇〇円

控訴人義男の入院期間六〇二日間、控訴人義男は前記のとおり重症であったため、脳圧を上げないよう野菜や果物等を常時必要とし相当額の食費代を出費し、また紙おむつを使用する等通常の入院患者より多額の出費をしているので、入院雑費については一日当たり一五〇〇円とするのが相当であり、六〇二日間として合計金九〇万三〇〇〇円となる。

なお、通院雑費については請求しない。

(7)  文書料 金一〇〇〇円

控訴人義男は、診断書料として金一〇〇〇円を要した。

(8)  介護料 金三一四二万八五〇七円

控訴人義男の後遺症状はきわめて重く終生その介護を必要とする状況にあり、またいつ発作を起こすかも知れず、通院も常に付添いを必要とするものであるところ、右介護費用は一日当たり金五〇〇〇円が相当であり、控訴人義男は昭和五六年一一月の時点において平均余命二八年の生存が可能であるから、ホフマン式係数一七・二二一一を乗じて将来の介護料の現価を算定すると金三一四二万八五〇七円となる。

(9)  休業損害 金二一万七六六七円

控訴人義男の後遺障害は、最終的には昭和五八年一〇月末日に固定したものであるところ、同人が本件事故により受傷しなければ、東京都交通局より所定の給与を得ていたはずである。控訴人義男は、昭和五八年九月八日から後遺障害が固定した同年一〇月末日までの間、東京都及び基金から本給等の支給を受けていたが、作業給(特殊勤務手当、超過勤務手当、夜勤手当)の支給を受けていない。よって、当時の作業給合計が一か月金一二万三二〇八円であったから、右症状固定時まで一か月と二三日分の休業損害は金二一万七六六七円となる。

(10)  逸失利益 金九〇四五万三四五〇円

控訴人義男は、昭和八年六月二日生の健康な男子で、本件事故当時、東京都交通局職員として勤務していた。本件事故により受傷しないで勤務していたとすれば、控訴人義男が得たであろう基本給等の金額及び作業給の時間単価は、別表一「控訴人大嶋義男の得べかりし基本給料等一覧表」記載のとおりであり、控訴人義男が受傷前一年間に得た特殊勤務手当額及び作業給算出の基礎となった作業時間数は、別表二「控訴人義男の特殊勤務手当額及び作業時間一覧表」記載のとおりである。また、東京都交通局企業職員の得る夏季手当、年末手当、勤勉手当の支給月及び支給割合は、別表三「夏季手当等支給一覧表」記載のとおりである。

以上を前提として控訴人義男の得べかりし給料等を算出すると、別表四「控訴人義男の得べかりし給料等一覧表(1)ないし(8)」記載のとおりとなる。

しかし、控訴人義男は昭和五八年一一月一日から昭和六〇年一〇月三一日までの間、東京都交通局より別表五「控訴人義男の受給額一覧表(1)(2)」記載のとおりの給料等を支給されたから、前記金額からこれらを差し引くこととする。

以上を総合して、年度別の得べかりし金額につき、症状固定時である昭和五八年一〇月末日における現価を算出するため、ホフマン式により中間利息を控除した各年度の逸失利益は、別表六「控訴人大嶋義男の逸失利益計算表」記載のとおり合計金九〇四五万三四五〇円となる。なお、条例によれば、控訴人義男が定年退職となるのは、満六〇才となる日ではなく、それ以降の最初の三月三一日、すなわち平成六年三月三一日である。また、控訴人義男の定年後の所得について、少なくとも定年時の所得の六〇パーセントを取得し得るのが社会通念上顕著な事実であるから、定年退職後の平成六年四月一日から満六七才になる平成一二年六月二日までの間、基礎となる年収額の六〇パーセントをもって算出した。

(11)  慰謝料 金二五〇〇万円

控訴人義男が本件事故により被った傷害の程度は重大であること、入通院治療期間、後遺障害の内容及び程度、被控訴人當麻は飲酒、速度違反の無謀運転によりひき逃げをしたのであって、事故態様が極めて悪質であること、控訴人義男が誠実で優良なバス運転者であったこと、控訴人義男の精神的肉体的苦痛は生涯続くものであることを考慮すると、慰謝料は金二五〇〇万円(入通院分が金五〇〇万円、後遺障害分が金二〇〇〇万円)とするのが相当である。

(12)  衣服、自転車等 金三万円

控訴人義男は、本件事故により、着用していた洋服上下、肌着、靴等を破損し着用不能となった。また、乗っていた自転車、洋傘も使用不能となり、少なくともこれら合計金三万円の損害を被った。

(13)  合計 金一億四八九九万〇七一八円

以上によれば、控訴人義男が被控訴人當麻の惹起した本件事故のため被った損害の合計額は、金一億四八九九万〇七一八円となる。

(14)  損害の填補 金二〇〇〇万円

控訴人義男は、損害の填補として、加害車両の加入する自賠責保険から、後遺障害分として金二〇〇〇万円の支払いを受けたので、右金額を控訴する。

(15)  弁護士費用 金九三五万〇二四五円

控訴人らは、本件訴訟を委任した勝野義孝弁護士に対し報酬金二八〇万円、鹿児嶋康雄弁護士に対し着手金、中間金七〇〇万円、卜部忠史弁護士に対し着手金一〇〇万円合計金一〇八〇万円を支払った。これを控訴人義男と控訴人とし子の請求額で按分すると、控訴人義男の負担額は九三五万〇二四五円となる。

(16)  総計

よって、控訴人義男の損害は、合計金一億三八三四万〇九六三円(原審認容額二七三五万八五六六円のほかに金一億一〇九八万二三九七円)となる。

(二) 控訴人とし子の損害

(1)  慰謝料 金二〇〇〇万円

原判決事実摘示の主張のほかに、控訴人義男の前記のような後遺症状に鑑みると、控訴人とし子は、円満、明朗な夫婦生活を営むことは全く望むことができず、家族団欒の味も一生味わう余地もなくなり、かつて老後の幸せを夢見て立てていた生活設計もことごとく壊れてしまった。以上のような人生への失望感、失意、不安等の精神的苦痛は、受傷者である控訴人義男と同質同量といえるものであるから、控訴人とし子の慰謝料は金二〇〇〇万円が相当である。

(2)  弁護士費用 金一四四万九七五五円

控訴人らは、本訴の提起追行を弁護士に委任し、前記のとおり、弁護士費用として合計金一〇八〇万円を支払った。これを控訴人義男と控訴人とし子の損害賠償請求額により按分すると、控訴人とし子分の弁護士費用として金一四四万九七五五円が認容されるべきである。

(3)  合計

よって、控訴人とし子の損害は、合計金二一四四万九七五五円(原審認容額二二〇万円のほかに金一九二四万九七五五円)となる。」

二  控訴人らは、同5(まとめ)(一)、(二)(原判決一七枚目表一行目から裏二行目まで)を次のとおり改める。

「よって、本件損害賠償金として、控訴人義男は被控訴人らに対し連帯して金一億三八三四万〇九六三円、控訴人とし子は被控訴人らに対し連帯して金二一四四万九七五五円、及び右各金員に対する本件事故発生日である昭和五五年五月一三日から(被控訴人会社は本件事故当日に本件事故発生の事実を知ったものであるから、被控訴人会社に対しても同日からの遅延損害金を請求する。)各支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。」

三  被控訴人らの抗弁

被控訴人らは、抗弁として、原判決事実摘示の「抗弁」(ただし、同2(一)(自賠責保険から傷害分として金一二〇万円が填補されたこと)の主張は撤回し削除する。)に加え、次のとおり主張を追加する。

(被控訴人ら)

1 控訴人義男は、地方公務員災害補償法により平均給与額の三一三日分の障害補償年金(八五・七五パーセント相当)の支給を受けられるほか、地方公務員等共済組合法の規定により平均給与額から支給停止額を差し引いた額の公務上障害年金(七三・三パーセント相当)の支給を受けられる。両年金を合計すると、平均給与額の一五九パーセントの補償を受けているのであり、そもそも控訴人義男には逸失利益は存在しない。

仮に、控訴人義男に逸失利益の損害があるとしても、同控訴人の左記各年金受給額を逸失利益から控除すべきである。

(一) 控訴人義男は、基金から、昭和五八年一〇月から平成二年一一月までの間に合計金三一二四万七二三二円の障害補償年金の支給を受けた。

さらに、将来支給が確実な障害補償年金も逸失利益から控訴されるべきである。

(二) 控訴人義男は、東京都職員共済組合(以下「共済組合」という。)から、昭和六〇年四月から平成二年一一月までの間に合計金一八三四万二一五五円の公務上障害年金の支給を受けた。

2 被控訴人会社は、昭和六一年一二月五日、昭和六二年二月二七日、同年三月二七日の当裁判所における準備手続期日において、被控訴人ら代理人を通じて、控訴人ら代理人弁護士鹿児嶋康雄に対し、原判決主文記載の各金員をいつにても支払える準備がある旨申し出て口頭の提供をしたが、同代理人はいずれも受領を拒絶したので、被控訴人会社は同年三月三〇日に左記の各金員を浦和地方法務局に弁済供託した。

(一) 控訴人義男に対し、元金二七三五万八五六六円及びこれに対する昭和五七年五月一六日から昭和六二年三月三〇日まで年五分の割合による遅延損害金六六六万七二四四円合計金三四〇二万五八一〇円(供託番号・浦和地方法務局昭和六一年度金第五〇〇六号)

(二) 控訴人とし子に対し、元金二二〇万円及びこれに対する昭和五七年五月一六日から昭和六二年三月三〇日まで年五分の割合による遅延損害金五三万六一三七円合計金二七三万六一三七円(供託番号・同法務局昭和六一年度金第五〇〇七号)

(被控訴人会社)

3 被控訴人當麻が被控訴人会社に付保していた自動車対人賠償責任保険の保険金額の総額は金八〇〇〇万円であるところ、被控訴人会社は、現在までに本件事故に関し左記のとおり合計金五九二八万六三七六円の保険金を支払(あるいは弁済供託)ずみであるから、保険金額から右支払保険金を差し引いた残額とこれに対する年五分の割合による遅延損害金を超える控訴人らの請求は失当である。

原審原告東京都に対して 金一九一万九六八七円

原審原告基金に対して 金二七八〇万八一二三円

控訴人義男に対して 金二七三五万八五六六円

控訴人とし子に対して 金二二〇万円

計 金五九二八万六三七六円

四  右追加主張の抗弁に対する認否

1  右抗弁1の主張は争う。

控訴人義男に支給されている障害補償年金及び公務上障害年金は、公務上障害を負った者に対し生活の安定と福祉の向上を目的として支給される労りと励ましの福祉手当である。そしてこれは、東京都が負担金を納入し、また控訴人義男が掛金を払い込んだ対価としての補償であって、不法行為と関係なく支払われるべき性格のものであり、地方公務員災害補償法五九条等は適用されない。したがって、右年金を本件損害賠償額から控訴することはできない。

2  同2の事実のうち、被控訴人会社が昭和六二年三月三〇日浦和地方法務局に被控訴人ら主張の各金員の供託をしたことは認めるが、その余は否認する。

3  同3の主張は争う。

第三証拠関係《省略》

理由

一  本件事故の発生、事故前後の状況と事故の態様、控訴人義男の受傷と治療経過、被控訴人當麻の責任、被控訴人當麻と被控訴人会社との間の本件任意保険契約の内容についての当裁判所の判断は、次のとおり付加訂正するほかは、原判決の理由一ないし四項(二二枚目表二行目から三五枚目表六行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三〇枚目表九、一〇行目の「プラスナック」を「プラスチック」と訂正する。

2  同三三枚目裏二行目の「第三〇号証、」の次に「第七七号証の一、」を加え、同五行目の「いずれも」から三四枚目表一行目末尾までを次のとおり改める。

「控訴人義男の受傷内容とその治療経過は、控訴人ら主張のとおりであること(ただし、都立清瀬病院へは昭和五六年一〇月一六日まで入院し、同日浦和市立病院に転院している。)、控訴人義男の傷害は最終的には遅くとも昭和五八年一〇月三一日をもって症状が固定し、控訴人ら主張の後遺障害が残ったことが認められる。」

3  同三四枚目表六行目の次に、行を改めて次のように加える。

「請求原因3(一)(2)(被控訴人當麻の不法行為責任)について、被控訴人當麻は、前記認定のとおり、普通乗用自動車を運転して本件交差点に至った際、酒気を帯び、かつ制限時速四〇キロメートルのところを時速八〇キロメートル以上の高速度で運転をした過失により、右交差点の横断歩道上を自転車に乗って横断中の控訴人義男に気付かず、前方約四一メートルに至って初めて同人を認め、危険を感じて急制動をかけたが及ばず、自車を同人の自転車に衝突させたものであるから、被控訴人當麻は、民法七〇九条に基づき本件事故により控訴人らが被った物的損害を賠償する責任を負う。」

二  損害について判断する。

1  控訴人義男の損害

(一)  治療費 金六万四五〇〇円

原判決の理由五項1(一)(三六枚目表三行目から裏六行目まで)を引用する。

(二)  入院付添費 金四四万九八七六円

《証拠省略》によれば、控訴人義男は前記各病院に入院中、前記認定のような重症で介護を要する状態にあり、妻とし子は病院に宿泊して看病したこともあったこと、基金から支払いのあった分を除き、控訴人義男は、大久保病院、浦和市立病院、川久保病院に入院中の一一九日間、妻とし子及び娘伸子の介護を受けたことが認められる。右の諸事情及び弁論の全趣旨によれば、入院付添費としては一日当たり金三五〇〇円をもって相当と認められるから、右一一九日間の入院付添費は金四一万六五〇〇円となる。

また、《証拠省略》によれば、清瀬病院入院中の四日間、小平看護婦家政婦紹介所から職業付添人を雇い、合計金三万三三七六円を支出したことも認めることができる。

右金額を合計すると金四四万九八七六円となる。

(三)  食費 金一万四〇〇〇円

《証拠省略》によれば、控訴人義男は、浦和市立病院に入院中の昭和五六年一一月一〇日、同月二四日、一二月四日、同月二二日の四日間に本件事故と相当因果関係のある給食費として各金三五〇〇円合計金一万四〇〇〇円を支出したことを認めることができる。

(四)  リハビリテーション器具等 金一三万二八七五円

《証拠省略》によれば、控訴人義男は、後遺障害による生活上の不便を補うため、家屋内の手すり設置に金二万五八〇〇円を、シルバーカーの購入に金一万五八〇〇円を、座椅子の購入に金三八〇〇円を、眼鏡の購入に金四万〇九〇〇円を、リハビリ器具であるトリムサイクルポーターに金二万九〇〇〇円を、聴診器付き血圧計(リハビリを始める際に必要と認められる。)に金一万二〇〇〇円を、歩行補助用ステッキの購入に金二〇〇〇円を要したこと、また車椅子の自己負担分として金三五七五円を支出したことが認められ、以上合計金一三万二八七五円は本件事故と相当因果関係のある損害ということができる。

(五)  交通費 金一五万一三八一円

《証拠省略》によれば、控訴人義男は、同人の入院期間中、付添看護に当たった控訴人とし子の通院のために、少なくとも、大久保病院に通院分(一七日間)として、浦和市上木崎の自宅から同病院までのバス代及び電車代が往復七〇〇円であったから合計金一万一九〇〇円を、清瀬病院に通院分(五日間)として、自宅から清瀬病院までのバス代、電車代及びタクシー代が往復二五〇〇円であったから合計金一万二五〇〇円を、浦和市立病院にバスによる通院分(三五日間)として、自宅から同病院までのバス代が往復三六〇円であったから合計金一万二六〇〇円をそれぞれ支出したこと、また、控訴人義男は浦和市立病院に通院中の六日間、自宅から同病院までタクシーを利用し、そのタクシー代が往復二九二〇円であったから合計金一万七五二〇円を支出したことが認められ、以上合計金五万四五二〇円の損害を被った。

さらに、《証拠省略》によれば、付添看護に当たった娘伸子の各病院への通院、及び控訴人義男の浦和市立病院への通院(三四二日間)のために伸子運転の自家用自動車を利用したこと、控訴人義男は昭和五六年六月から昭和五八年一〇月までの間、右自動車のガソリン代として合計金一九万三七二三円を支出したことが認められ、右ガソリン代のうち少なくとも半分の金九万六八六一円は本件事故と相当因果関係のある通院交通費と認めるのが相当である。

右金額を合計すると金一五万一三八一円となる。

(六)  入院雑費 金六〇万二〇〇〇円

原判決の理由五項1(六)(三九枚目裏四行目から九行目まで)を引用する。

(七)  文書料 金一〇〇〇円

原判決の理由五項1(八)(四〇枚目表二行目から五行目まで)を引用する。

(八)  介護料 金二〇六五万四四九二円

前記認定のとおり、控訴人義男は今後も外傷性てんかんの発作のおそれがある等重篤な後遺障害が存在することに鑑みると、同控訴人に終生介護を必要とするものと認められ、本件の諸般の事情を考慮すると、その介護料は一日当たり金三五〇〇円が相当である。

控訴人義男は、前記のとおり昭和五六年一二月二八日浦和市立病院を退院し、昭和五七年初めからは通院治療を始めているところ、《証拠省略》によれば、同控訴人は昭和八年六月二日生の男子で右退院時には四八歳であることが認められ、同控訴人の年齢、性別に対応する平均余命に照らすと、同控訴人はその後二八年間は生存可能であると推認されるから、ホフマン式計算法によって年五分の割合による中間利息を控除し(事故後長期間経過している本件では、ライプニッツ式によって複利で中間利息を控除した上、単利で遅延損害金を付することは、不合理と考えられるので、ホフマン式を採用する。)、事故時である昭和五五年五月一三日時点における右介護料の現価を算出すると、次の計算式のとおり、金二〇六五万四四九二円(一円未満切捨て)となる。

3,500×365(年額)×(18.0293(30年の係数)-1.8614(2年の係数))=20,654,492

(九)  休業損害

控訴人義男は、昭和五八年九月八日から症状固定日である同年一〇月末日までの間、作業給(特殊勤務手当、超過勤務手当、夜勤手当)二一万七六六七円の支給を受けていないのでこれを休業損害として請求する。しかし、弁論の全趣旨によれば、右作業給はいずれも、当該事業所の必要等により乗務日数あるいは車内収入等が変わることによりその金額も変わり得ることが認められ、あらかじめその有無あるいは時間数等を確定し得るものと認めるに足りる証拠はない。したがって、同控訴人主張にかかる作業給の休業損害は、本件事故がなかったならば確実に取得できたであろう得べかりし損害と認めることができず、同控訴人の主張は、その余の点を検討するまでもなく理由がない。

(一〇)  逸失利益 金二七〇八万七五二一円

(1) 控訴人義男は、昭和八年六月二日生の男子で、本件事故当時、東京都交通局職員として勤務していたことは前記のとおりであり、本件事故により労働能力を一〇〇パーセント喪失したものと認められる。

《証拠省略》によれば、控訴人義男が本件事故に遭遇せずに右勤務を続けていれば、東京都交通局より、症状固定日の翌日である昭和五八年一一月一日から定年により退職するべき平成六年三月三一日(満六〇歳になった日以降の最初の三月三一日)まで所定の給料等を得ていたはずであること、控訴人義男が得たであろう給料等の種類は、基本給料、抹養手当、調整手当、住居手当並びに夏季手当、年末手当、勤勉手当であること、控訴人義男が右期間に得たであろう基本給料、抹養手当、調整手当、住居手当の金額は、別表一の当該欄(別表七の①欄)記載のとおりであり、同じく得たであろう夏季手当、年末手当、勤務手当の支給月及び支給割合は、別表三記載のとおりで、その金額は、別表七の②欄記載のとおりであること、これに対して控訴人義男が現実に支給された金額は、別表五(別表七の③欄)記載のとおりであることをそれぞれ認めることができる。

控訴人らは、作業給(特殊勤務手当、超過勤務手当、夜勤手当)をもこれに算入すべきことを主張するが、これらについて金額等を確定することができず得べかりし利益として算入できないことは前記のとおりであり、控訴人らのこの点に関する主張は失当である。

また、控訴人義男は、定年後満六七歳に達する直前の平成一二年五月まで、労働者の年齢別平均給与額に相当する所得を得ることができたと考えられ、その額は別表七の①の平成六年四月以降の欄記載のとおりである。

(2) しかしながら、乙第三七ないし第四三号証(当裁判所の昭和六二年一〇月七日付、昭和六三年六月二二日付、平成元年四月一七日付、同年七月一〇日付及び平成二年五月二日付各調査嘱託に対する基金及び共済組合の各回答書)並びに当裁判所の平成二年一二月二六日付調査嘱託に対する基金及び共済組合の各回答によれば、控訴人義男は、本件事故に起因する障害に関して、基金から地方公務員災害補償法に基づく補償として、昭和五八年一〇月分以降障害補償年金の支給を受けており、そのうち昭和五八年一一月分から平成二年一一月分までの支給額を年毎にまとめると、別表七の④欄記載のとおりであること、同様に共済組合から、地方公務員等共済組合法に基づく給付として、昭和六〇年四月分以降障害年金(公務上)の支給を受けており、平成二年一一月分までの支給額を年毎にまとめると、別表七の⑤欄記載のとおりであることが認められる。

地方公務員災害補償法に基づく障害補償年金及び地方公務員等共済組合法に基づく障害年金は、いずれも被災職員の受けた損害を填補するものである。そこで、地方公務員災害補償法五九条及び地方公務員等共済組合法五〇条は、災害が第三者の行為によって生じた場合において、受給権者に対し基金等が先に補償又は給付をしたときには、その価額の限度で受給権者の第三者に対する損害賠償請求権は当然基金等に移転し、またこれとは反対に第三者が同一の事由につき先に損害の賠償をしたときは、基金等はその価額の限度で補償の義務を免れ、又は給付をしないことができると規定し、受給権者に対する基金等の補償又は給付と第三者の損害賠償とが相互補完の関係にあり、同一の損害について二重の填補を認めるものではない趣旨を明らかにしている。このことからすれば、被害者が基金等から障害補償年金等を現実に受給し、損害が填補されたときは、その限度で被害者は加害者に対する損害賠償請求権を失うことになるので、これを損害から控除すべきであるといわなければならない。

なお、控訴人義男は、基金から障害補償年金のほかに障害特別給付金も受給しているが、これは、地方公務員災害補償法施行規則三八条の規定により、被災職員の福祉の増進のために措置されているものと認められるので、控除の対象とはならない。

(3) 被控訴人らは、控訴人義男が基金等から受ける二つの年金を合計すると平均給与額の一五九パーセントに達するので、同控訴人には逸失利益はないことになる、仮にこれがあるとしても、基金等からすでに支給された年金だけでなく、将来支給が確実な年金額も逸失利益から控除すべきである、と主張する。

しかし、民事上の損害賠償と社会保障としての災害補償とは、それぞれに別個の目的をもった独立の制度であり、一方が認められるときは他方が不要になるというものではなく、ただ、現実にその一方が実施されたときに二重の利益を与えることのないよう調整が必要とされるに過ぎない。両制度の関係がこのようにとらえられるとするならば、控訴人義男が年金を受給する地位にあるということによって当然に得べかりし利益の喪失による損害賠償請求権が生じないことになるものではないことはもとより、未だ受給していない将来の年金給付額を将来の逸失利益分から控除すべきものでもないといわざるをえない。

(4) よって、(1)の得べかりし利益の喪失額(別表七の①と②の合計から③を引いた額)から(2)の受給した年金額(別表七の④と⑤の額)を控除すると、別表七の⑥欄のとおり、昭和五八年一一月から平成元年一二月までは得べかりし利益の全額が填補されていることになる。平成二年一月から同一二年五月までの分については、各年毎の金額につき、事故時である前記昭和五五年五月一三日現在の現価をホフマン式により中間利息を控除して算出すると、別表七の⑧欄のとおり合計金二七〇八万七五二一円となる。

(一一)  慰謝料 金二〇〇〇万円

原判決の理由五項1(一一)(四二枚目表七行目から裏五行目まで)を引用する。

(一二)  衣服、自転車等

控訴人義男は、本件事故により洋服上下、肌着、靴、自転車、洋傘等を破損し金三万円の損害を被った旨主張するが、それら各品目の損害及び額を認めるに足りる証拠がない。

(一三)  損害の填補 金二〇八九万七八四二円

被控訴人らが自賠責保険金一二〇万円の填補の主張を撤回したことにともない、原判決四二枚目裏末行の「抗弁2(一)」から同四三枚目表一行目の「及び」までを削除する。その余については、原判決理由五項1(一三)の説示のうち四三枚目表一行目の「抗弁2(三)のとおり」から裏九行目末尾までを引用する。

したがって、本件における損害の填補額は金二〇八九万七八四二円となる。

(一四)  右(一)ないし(八)、(一〇)、(一一)の合計金額から(一三)の填補額を控除すると、金四八二五万九八〇三円となる。

(一五)  弁護士費用 金四〇〇万円

弁論の全趣旨によれば、控訴人義男は被控訴人らから任意の支払を受けられないので、弁護士に訴訟の提起追行を委任し、報酬の支払を約束したことが認められる(ただし、当審では、委任した弁護士が次々に辞任した。)。本件における事案の内容、難易、審理の経過、認容額その他本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、控訴人義男が被控訴人當麻に対し、本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求め得る弁護士費用は、金四〇〇万円とするのが相当である。

(一六)  そこで、(一四)と(一五)の金額を合計すると、金五二二五万九八〇三円となる。

2  控訴人とし子の損害

(一)  慰謝料 金二〇〇万円

原判決の理由五項2(一)(四四枚目裏五行目から四五枚目表五行目まで)を引用する。

(二)  弁護士費用 金二〇万円

控訴人とし子も弁護士に訴訟の提起追行を委任し、報酬の支払を約束したことが認められるが、控訴人義男についてと同様の事情を斟酌し、本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求め得る弁護士費用は、金二〇万円とするのが相当である。

(三)  よって、控訴人とし子の損害は合計金二二〇万円となる。

三  弁済供託について

《証拠省略》によれば、昭和六一年一二月五日、昭和六二年二月二七日、同年三月二七日の当裁判所における各準備手続期日において、被控訴人会社代理人高木壯八郎弁護士は、控訴人ら代理人鹿児嶋康雄弁護士(のち辞任)に対し、原判決主文第四項(一)で支払を命じられた各金員をいつにても支払う準備がある旨申し出たこと、これに対し控訴人らは、右供託は被控訴人会社が勝手にやることで控訴人らとしては関知しない旨返答し、もって右受領を拒否したこと、そこで被控訴人会社は同年三月三〇日に被控訴人ら主張の各金員を浦和地方法務局に弁済供託したことを認めることができる。

当審において認定した控訴人らの損害は前記二のとおりであるから、控訴人義男に関する分についていえば、被控訴人会社が原審判決に基づいてした提供供託は、債務の一部の提供供託にしかならない。しかし、不法行為による損害賠償債権(及びこれを前提とする保険会社に対する直接請求権)は、貸金債権のように一義的に明確な名義額のあるものと異なり、裁判所が確定した事実に基づき損害の大きさを計量し、金銭に評価する操作を施すことによって債権額が裁定されるという特色を有するものであり、債務者としては判決の確定する前に客観的に相当な債務額を知ることができない。このような場合に、債務者の提供した金額がのちに判決で確定された賠償すべき額に足りないとの一事により、常に債務の本旨に従った提供にならないと解したのでは、債務者に難きを強いる結果となる。本件においては、被控訴人会社は、原審判決が証拠調の結果に基づき控訴人義男の損害として算定し被控訴人会社に支払を命じた金額を、判決確定をまたないで進んで提供したのであって、債務者のとった措置として十分な合理性があり、信義則上欠けるところはないといってよい。損害賠償債権の前記のような特殊性に鑑みると、被控訴人会社のした提供は、結果的には債務の一部の提供ではあっても適法であり、これに基づく供託も供託額の限度で債務消滅の効果をもたらす適法な供託であると解するのが相当である。

そうすると、被控訴人らの控訴人義男に対する債務は、右供託額すなわち元金二七三五万八五六六円とこれに対する昭和五七年五月一六日から同六二年三月三〇日まで年五分の割合による遅延損害金の限度で消滅し、控訴人とし子に対する債務は同じく元金二二〇万円とこれに対する右同期間同率の遅延損害金の限度(被控訴人会社については債務の全額である。)で消滅したことになる。

四  被控訴人當麻と被控訴人会社の間の本件任意保険契約が、対人賠償一名につき金八〇〇〇万円を限度額とするものであることは、当事者間に争いがない。

《証拠省略》によれば、被控訴人会社は、右三で述べた控訴人義男に対する金二七三五万八五六六円、控訴人とし子に対する金二二〇万円の各供託のほかに、原審判決に従い基金に対し金二七八〇万八一二三円、東京都に対し金一九一万九六八七円(いずれも元本額)の支払をしたことが認められるので、金八〇〇〇万円からこれらを差し引くと、被控訴人会社の保険責任の残限度額は金二〇七一万三六二四円である(遅延損害金は、金八〇〇〇万円の保険金額の枠外で支払われるものである。甲A第九九号証参照)。

五  以上説示したところをとりまとめると、結論として次のようになる。

1  被控訴人當麻は、

(一)  控訴人義男に対し、(1)金二四九〇万一二三七円(前記二1(一六)の五二二五万九八〇三円から供託額二七三五万八五六六円を差し引いた額)及びこれに対する本件事故発生の日である昭和五五年五月一三日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金、並びに(2)二七三五万八五六六円に対する昭和五五年五月一三日から同五七年五月一五日まで年五分の割合による遅延損害金二七四万七〇九九円の支払義務がある(右(1)のうち金二〇七一万三六二四円とこれに対する昭和五七年五月一六日以降の遅延損害金は、被控訴人会社の後記2(一)の債務と競合し、不真正連帯債務となる。)。

(二)  控訴人とし子に対し、二二〇万円に対する昭和五五年五月一三日から同五七年五月一五日まで年五分の割合による遅延損害金二二万〇九〇四円の支払義務がある。

2  被控訴人会社は、

(一)  控訴人義男に対し前記四の金二〇七一万三六二四円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和五七年五月一六日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある(これは、被控訴人當麻の前記1(一)の債務と競合し、不真正連帯債務となる。なお、控訴人らは、被控訴人会社も事故発生日である昭和五五年五月一三日から遅滞の責に任ずべきであると主張するが、被害者の保険会社に対する直接請求権は不法行為による損害賠償請求権そのものではないので、期限の定めのない債務として、履行の請求により遅滞に付せられるものと解すべきである。)。

(二)  控訴人とし子に対しては、供託により支払義務は全部消滅した。

以上の次第で、控訴人らの本訴請求は、右1(一)(二)及び2(一)の限度で正当として認容し、その余は失当として棄却すべきものである。よって、控訴人らの本件控訴(当審における拡張請求を含む。)を棄却し、附帯控訴に基づき原判決を右のとおり変更し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九〇条(控訴人とし子の原審における訴訟の提起追行は必要な行為であった。)、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤井正雄 裁判官 伊東すみ子 大藤敏)

<以下省略>

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